アメリカかぶれの自由帳

関西の大学5年生。思ったことや勉強したことについて手軽にまとめてみる…。

pediatrics d3/ Tulsa d20 なぜ小児科は人気がないのか

気づけばタルサに来てから早くも20日目。

残り9日しかないと思うと何もしていないのが勿体なく感じてしまう。

 

とは言いつつもimpatientの実習は基本的に毎日同じことの繰り返し。

患者さんの状況は日によって異なりこそすれ、基本的には管理がメインになるため僕ら留学生ができることはほとんどない。

個別のラウンドのときに便乗して聴診させてもらうことぐらいな気がする。

そこで、逆に何をすべきか考えてみた。

 

患者さんと話せないならその分医者と話せばいいのではないか。

 

昨日のも色々と話すことはできたけど、3日目となるとだいぶ雰囲気に馴染めてくる。

カルテ記載中の先生にいかに上手く邪魔に思われないようにしながらも質問をするか。

最初は疾患や治療方針についての質問から始めて、次第に話をそらしていくとなかなかに興味深い話を色々聞けた。

 

"Listen, there are several reasons why many people don't want to end up in pediatrics."

と話し始めたと思いきやここから15分ほどマシンガントークが始まる。

簡潔にまとめると、

1.親の対応に手間がかかる

2.患者さんが助からなかったときの精神的なショックが大きい

3.治療の施しようがないケースがしんどい

4.成長していくにつれて処方薬などの用量が変化するため難しい、基準値がややこしい

の4つが主な理由だそうで。

 

1に関しては言うまでもない。

「医師⇔患者」の関係に第三者である親が治療方針に介入してくるので非常に厄介なケースが多いとのこと。今日話をしてくれた先生は親を患者さんと同等にとらえて診察をした方がいいとも言っていた。

 

2,3は似たようなニュアンスではあるけど、意味合いがだいぶ異なるそう。たぶん僕の国語力では表現できない気が…。

不謹慎ながらも分かりやすい例えると、2に関しては

100歳のおじいちゃんよりも5歳の子が亡くなったほうが「かわいそうに」と思う人の方が多いよね

ということである。まだ将来性を秘めた幼い子供を亡くすことのショックは何年経ってもそう簡単に変わるものではないし、小児科ではそんなケースに遭遇することも頻繁にあるから覚悟しておいたほうがいいよと忠告された。

 

4は言われてみれば当然なことだし、さほど難しくはないかと。

(小児の血圧の基準値が性別や身長で定義されているとは知らなかったけど)

 

問題は3である。

小児科で入院している子どもは急性期だけでなく慢性疾患の患者さんも存在する。

急性期で一番わかりやすいのは「虫垂炎の術後管理」

数日入院して、特に異常がなければすぐに退院できる。

慢性疾患だと、比較的多いのが水頭症などの先天性奇形。

ALLなどの治療可能な疾患ならともかく、改善がみられることのない先天性奇形だと、延命が原則となる。

経静脈で栄養を送り込みつつ、人工呼吸器で心肺を維持する。

生命の維持はできているわけだが、10年、20年かけて治療を続けたところで改善が見られないことが明らかなケースだってある。

 

そんな状況で医師はどのような立場でいないといけないのか。

親が望めば治療を続けないといけないし、しかも高額な治療費がかかることも目に見えているわけだし。

医療は「患者の要求に応じた診療行為を行う」という側面から見ても分かるようにサービス業の一種である。

つまり僕らに説得や意見を述べる自由はあっても、最終決定権は患者さんやその家族に委ねられるので、先生方は医療的・法律的に正しい範囲内であればその意見に従うしかないと。

果たして自分が将来医師になってこんなケースに遭遇したらどう考えるだろうか。

 

今回の小児科の実習は自分が将来アメリカで小児科ができるのかを考えることを目的にもしているので、こういった話を聞けると本当にありがたい。

inpatientの実習も明日で最終日になるので、何か1つでも自分にとってプラスなことが見つけられたらいいのだが。

 

※ちなみに話に登場した内容は全部たとえ話であって、特定の患者さんについてのことではありません。