FM day6/ Tulsa day12 短期集中
今日の実習は午前中のみ。
午後は学生や研修医向けにレクチャーが行われるらしいが、主にEMR(Electronic Medical Record)の使い方についてだそうだったので、帰ることにした。
実習と言っても処置を行うことは当然できず、単なるobserverとしての参加なので、EMRを利用することはできない。
ちなみにEMRってのは各研修医及び学生のパソコンにインストールされる電子カルテのことで、日本みたいにデスクトップのパソコンを使うわけではない。なのでレジデントは控え室にいるときは基本的にパソコンを充電させたままにし、診察をするときはプラグを引っこ抜いてパソコンだけを持っていく、といった流れになる。
今日の指導医は今まで当たったことのない人で、ただ毎日控え室で他の先生を追いかけまわしていたこともあってお互い面識はあった。
今までの指導医と違ったのは、やたら質問が飛んでくること…。
耳痛を訴えた患者さんが来たのだが、
「急性中耳炎と滲出性中耳炎の鑑別は?」
「治療はどうする?」
「治療が不十分だった場合のリスクは何が考えられれる?」
などなど、診察とこちらの質問タイムが終わったら次々と飛んできた。
分からなかった場合は「じゃあ調べてみて」とuptodateの該当項目を印刷してくれて、ポイと手渡される。
ただ15ページほどの量をもらったところでどこから読み始めたらいいのか分からない。
正直最初は鬼畜かと思ったが、わからないと素直に言ってみたらこちらが理解するまでとことん付き合ってくれる。
まだ日本で十分に実習の経験があるわけでもないが、なんとなくアメリカの医師の方が教育熱心な気がする。熱心というよりは、「教育」も仕事の一環と捉えている人が多く、だからどれだけ一見不愛想な人でも大体教えてくれるときは優しい。
ぶすっとする様子や、「こんなことも分からないのか」など言われることは一切ない。
必ず、僕らが理解できるレベルまで落として、誘導をつけるなどして極力自己解決を図ろうとする姿勢がなんとなく見られた。
もちろん、たまたま僕の指導医がみんなそうであった可能性もあるが…。
さて、昨日書きそびれたトピックについて。
1.Xp, CTのオーダー
まず何より件数が日本よりも圧倒的に少ない。
左膝の関節痛、公園で遊んでいるときのケガ、指を扉で挟んだなど、整形外科領域の主訴で来院された患者さんを何人か見てきたが、今までX線検査をした患者さんは1人もいなかった。むしろレジデントが膝のレントゲンのオーダーをアテンディングに相談したら「そんなことしなくていい」と言われるほど。
保険の関係も多少はあるかもしれないが、それと同時に関与してくるのが被曝に伴うリスク。
20歳までにCTを3回受けたら脳腫瘍や白血病のリスクが10倍だとかそんなことを放射線科の授業で習った覚えはあるが、アメリカでは結構問題視しているらしい。
「日本人は福島の原発事故に関してはあれだけ騒ぐくせに、自らレントゲン検査を依頼しに病院に行くなんて何を考えてるんだろうね。」と指導医に言われるくらい日本でのオーダー件数は多いらしい。
問診や身体診察に可能な限り時間をかけて、XpやCTをオーダーしなくても済むようにする。もちろん誤診につながるリスクもあるかもしれないが、ある意味理にかなっているのなぁと思ったり。
2.保険について
有名な話ではあるが、アメリカは日本とは異なり国民皆保険制度は導入されていない。
所得に応じて各人が保険会社と契約を結び、支払った保険料によって受けられる診療や処置、処方できる薬剤が異なる。
貧困層の患者が救急搬送されたとしても、支払い能力がないと判断されるとそのまま放置されることもある、なんて話も聞いたことがあるが本当かどうかはよくわからない…。
僕が実際に見た症例だと、糖尿病の血糖コントロール中で体重が120~130キロ代の患者さんが日中の倦怠感を訴えており、睡眠時無呼吸症候群の可能性が疑われた。
問診時の様子などからほぼ診断を確定できるにも関わらず、検査や治療は保険ではカバーされていなかったため、何をすることもできず患者を帰した。
「アメリカ人は自己中だから健康な間も他の人のために保険料を払い続けるのがバカらしくてしない。」と考える人もいるそうだが、たしかに否定はできないなと思った。